2025年(SC)の活動報告
2023年3月からモロト県タパッチ準郡で開始しました。その知見を活かし、2年目(2024年8月~2025年7月)には対象地域をルプトゥック準郡とカティケキレ準郡に広げ、計3準郡で活動を行いました。さらに、3年目(2025年8月~2026年7月予定)は本事業の最終年として、これまでの成果を定着させることを目指しています。
本年(2年目)は、農家160世帯、混合農業普及員20人、村貯蓄貸付組合8団体、医療従事者30人、村落保健チーム80人、保護者約13,700人、子ども約4,200人を含む受益者18,200人に支援を届けることができました。以下に、本事業の活動と成果について報告いたします。
1.事業対象地の子どもたちを取り巻く課題
ウガンダの北東部のカラモジャ地域には、歴史的に多くの牧畜民が居住しており、主に畜産と雨に頼った天水農業で生計を立てています。しかし、頻繁に干ばつが発生するため、モロト県の住民の半数以上、すなわち2人に1人以上が貧困状態にあり、十分な食料を確保できない家庭が多くあります。このため、子どもたちの栄養状態にも深刻な影響が出ています。
特にモロト県は、干ばつや貧困に加え、道路や病院、学校などの生活基盤が十分でないことから、他の地域より課題が深刻です。約4割の子どもたちが慢性的な栄養不良の状態にあり、乳幼児死亡の45%は低栄養が原因です。また、栄養不良は子どもの認知発達の遅れや学力の低下につながり、子どもたちの健全な成長を妨げます。
2.本事業の目的
子どもの低栄養が深刻であるウガンダ・モロト県で、農・畜産業支援による世帯の生計向上、母子栄養に関する保健サービスの改善、セクター間の連携促進の活動を実施し、コミュニティが主体となった栄養改善に向けた活動を定着させ、5歳未満の子どもの栄養改善を目指します。
3.活動報告と主な成果
子どもの慢性的な栄養不良を防ぐには、家庭での食料生産、母親の妊娠期における栄養改善、産後の母乳育児の推進、適切なタイミングでの栄養バランスの良い補完食の導入などが大変重要です。本事業では、3つの柱(1)農・畜産業支援を通じた生計向上、(2)母子栄養に関する保健サービスの改善、(3)セクター間連携を中心に活動を展開しています。2年目には地域全体で子どもの栄養を支援する仕組みの土台ができ、子どもの栄養状態が改善しています。それぞれの柱の取り組みの内容と、それらの活動が現地で生み出している変化をについて、以下ご紹介します。
活動(1)農・畜産業支援を通じた生計向上
小規模農家グループを通じた、気候に適した農作物の栽培技術や家畜の飼育方法の指導を行いました。1年目に設立した5グループに加え、2年目には、モロト県ルプトゥック準郡とカティケキレ準郡で、新たに3つの小規模農家グループを設立し、計8グループとともに活動を実施しました。
参加家庭では食料自給率が向上し、余剰作物の販売による収入増加は、母子の健康維持に必要な食材の購入や医療費への投資にもつながっています。各世帯での食料生産や収入の安定化が進むことで、子どもたちが多様で栄養バランスのとれた食事をとれる環境が整いつつあります。さらに、農業技術の習得と農家グループの活動を組み合わせることで、地域全体で子どもの栄養を守る持続的な仕組みづくりにもつながっています。
モデル農園と小規模灌漑施設の建設
1年目より活動を開始したタパッチ準郡にて、モデル農園を開設し、併せて、小規模灌漑施設も整備しました。モデル農園は、研修で得た知識や技術を実践する場であるだけでなく、農家同士の学びの場となっています。また、灌漑施設の整備により、乾燥地域のモロト県でも一定の水源を確保できるようになり、季節に左右されずに農作業を継続できるようになりました。
モデル農園で野菜を収穫する様子
混合農業普及員と地域ボランティアへの技術研修
地方政府の担当官として、農・畜産業技術を農家に指導する混合農業普及員(20人)、家庭菜園の開設支援や日々の農作業のモニタリングと技術指導を行う地域ボランティア(10人)に対して研修を実施しました。ウガンダ国立農業研究機構からの講師が、気候変動に対応した農法、種子や農業資材の使用方法、作物の害虫と病気、家畜の飼育方法、養蜂、養鶏などの技術指導を行いました。
農家への技術研修
混合農業普及員が、上記研修で学んだ内容をもとに、対象農家への継続的な指導とサポートを行いました。また、8グループの農家リーダー32人に対して、グループの運営や販売戦略、家庭での栄養改善などを学ぶ、組織管理・運営能力強化のための研修も実施しました。さらに、農家たちは、準郡および県の行政官に対して、研修で学んだ農法を実演するフィールドデイも行い、学んだ技術の定着と地域全体での農業知識の普及が促進されています。
村貯蓄貸付組合活動
肥料や種子等の農業資材購入のための資金力を高めるため、各グループで村貯蓄貸付組合を立ちあげ、貯蓄や資金運用に関する研修を行いました。貯蓄の重要性、貯蓄方法、投資計画、村貯蓄貸付組合の活用等を理解し、対象農家が効果的に組合を活用できるよう取り組んでいます。その結果、8グループ合計で、貯蓄額は約278,900円、貸付額は約207,000円に達しました。
農業資材の供与
背負い式噴射器12個、植え付けライン60個を新規の3グループに、種子(トマト、ササゲ、キャベツ、玉ねぎ、ケール)を全8グループに提供しました。さらに、太陽光灌漑システムを購入し、モデル農園に設置しました。農家らは、これらの資材を活用し、モデル農園での実践的な研修を通じて技術を習得しながら、家庭菜園で多様な野菜を栽培しています。
養蜂
モロト県の乾燥した環境に適した生計向上活動として取り入れた養蜂も継続しています。8グループに、改良式の巣箱や養蜂用防護服、手袋等を配布しました。また、養蜂の研修を実施し、農家らは養蜂や蜂蜜製品の開発手法等を学びました。各グループのモデル農園において、研修での学びを生かしながら養蜂に取り組み、蜂蜜を収穫し、市場で販売しています。
養蜂の研修を受ける農家
活動(2)母子栄養に関する保健サービスの改善
母子の栄養改善を目指し、地域の保健医療人材への研修や啓発活動を通じて、保健サービスの質向上に取り組みました。また、母親グループによるピアサポートや共同菜園活動、養鶏などの生計向上支援も組み合わせることで、保健サービスと家庭・コミュニティレベルでの栄養に関する知識の普及や実践的な行動変容を促進する取り組みを強化しました。
これらの取り組みにより、地域住民が日常的に栄養相談や支援を受けられる環境が整い、参加家庭では子どもや母親が多様で栄養バランスのとれた食事をとれる状況が促進されました。また、保健医療人材のスキル向上と母親グループの活動を組み合わせることで、地域全体で持続可能な栄養改善の仕組み作りにつながっています。
保健医療人材への母子栄養についての研修
9ヶ所の保健医療施設職員と村落保健チームの計110人への栄養研修を行いました。モロト県保健局栄養担当主席官およびモロト地域病院栄養士を講師に招き、栄養の概念、食品群に関する記録のつけ方およびフォロー方法、妊娠時から授乳中の栄養管理、乳幼児への授乳と補完食の与え方など、幅広い内容を学びました。また、四半期に一度、母子の栄養改善のための活動をモニタリング・現地指導をしました。
母親・住民を対象にした啓発活動
上記研修の受講者が中心となり、毎月、地域内の9ヶ所の保健施設とコミュニティで、栄養啓発活動を行いました。参加者らは、妊娠中および授乳中の母親の栄養、授乳方法や補完食の作り方、手洗いうがいの重要性などを学びました。さらに、調理実習も毎月実施し、1回の食事で多くの栄養を摂取できる調理の方法や、子どもの補完食のレシピなどを教えています。
調理実演の様子
栄養スクリーニング(栄養状態の評価)
村落保健チームが村落での栄養スクリーニング活動を行いました。2歳未満の子どもの栄養状態を四半期に一回評価し、重度・中等度の栄養不良と診断した場合は、各子どもの栄養状態に合わせ、病院や保健施設へ紹介しました。また、栄養不良と判断された子どもやそのリスクがある子どもをもつ世帯を継続的に訪問、経過を観察・フォローアップしています。
栄養スクリーニングの様子
母親グループの活動
新たに20の母親グループを設立し、計40グループが活動中です。毎月集まり、栄養に関する知識や経験を共有しています。保健施設の敷地も活用して40の共同菜園を開設し、各グループに対し、共同菜園と家庭菜園で育てるトマトやケール、鉄分強化豆など、6種の野菜の種子を配布しました。また、小規模農家グループ同様に、村貯蓄貸付組合を始めたいという母親たちの要望を受けて、32のグループで開始しました。
栄養相談窓口の設置と強化
新たに4つの栄養相談窓口を設置しました(1年目は5つの保健施設へ設置)。相談窓口には、体重計や身長計、上腕周囲径テープ等も備え、訪問した母子の栄養状態の確認や、栄養指導をします。加えて、乳幼児や母子の栄養の理解促進のための資料を9ヶ所の保健医療施設と今次加わった36人の村落保健チームに配布しました。これらを活用して、地域住民が乳幼児の栄養・保健支援を適切に受けられるようにしました。
養鶏
15人のコミュニティボランティアに、セーブ・ザ・チルドレン所属の獣医による養鶏研修を実施しました。研修では、鶏の給餌と栄養管理、一般的な病気の兆候と対応、感染症予防のワクチン・接種スケジュールなどを学びました。また、サラヤ資金で購入した鶏800羽を母親グループのメンバーに配布し、各家庭が自ら建設した鶏小屋で鶏の飼育を開始しました。母親たちは、自分たちの手で養鶏活動を進めることに喜びと誇りを感じています。
活動(3)セクター間連携
対象準郡における栄養改善の取り組みをより効果的に進めるため、事業対象3準郡で準郡栄養調整委員会を開催しました。準郡行政府、保健・農業・教育など各セクターの担当者、市民社会団体、民間セクター、そして事業実施機関の代表が参加し、各分野の最新情報を共有するとともに、農業分野と栄養分野の連携不足や、食料安全保障、子どもの栄養状況に影響を与える要因について議論しました。課題解決に向けて、各セクターの役割分担や優先すべき活動を明確化し、準郡レベルでの栄養改善計画の策定や効率的な予算配分のあり方が整理されました。
さらに、県レベルではモロト県栄養調整委員会を開催し、県全体での栄養改善の進捗状況や課題を共有しました。また、事業成果報告会や、栄養計画策定を目的とした研修も実施しました。他NGOと連携して、地区レベルの関係者を対象にした「県栄養行動計画(DNAP)研修」も実施し、栄養ガバナンスの理解と実践能力を強化しました。
これらの取り組みにより、地域・県レベルでセクター間連携が強化され、持続的な栄養改善の仕組み作りにつながっています。
4.今後について
本事業は2023年3月に開始し、2025年8月から最終年である3年目の活動を実施しています。これまでに得られた学びと成果を踏まえ、農家の生計向上と母子栄養改善の活動をさらに定着させることを目指します。具体的には、農業や保健・栄養分野の地域活動を通じて、農家や母親・保護者が自らの力で持続的に子どもたちの栄養状態を改善できるよう支援します。
築いてきた基盤を活かし、一人でも多くの子どもが健全に成長できるよう、最終年も全力で取り組んでまいります。





