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研究


サラヤは創業以来、世界の「衛生」「環境」「健康」に貢献することで豊かで実りある地球社会の実現を目指しています。中でも「衛生」分野では、「うがい薬コロロ」をはじめとする、衛生・健康に着目した口腔ケア製品を研究開発し続けてきました。

2017年からは「オーラルケアステーション本町歯科」を大阪市に開設し、セルフケアのみならずプロフェッショナルケアにも着手。

2018年7月には、歯周病研究において先進的な研究実績のある「大阪大学歯学研究科」とサラヤの産学連携講座として「先進口腔環境科学(サラヤ)共同研究講座」を設立し、口腔環境を整えることで人間の自然治癒力を最大限に生かし、QOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指した研究を進めています。

研究実績:歯周病原因菌Pg菌の増殖抑制効果を持つクルクミン

クルクミンは黄色のポリフェノール色素で、ウコンなどに含まれる成分としてよく知られています。
その成分には様々な効果があり、抗菌作用や炎症抑制作用、抗酸化作用、抗ガン作用などが報告されています。

大阪大学歯学研究科では、クルクミンの持つ効果に着目し、歯周病予防へ及ぼす影響について研究を開始。その結果、クルクミンは歯周病菌であるPg菌の増殖・バイオフィルム形成を抑えることを発見しました1)

クルクミンの効果1:歯周病菌(Pg菌)の増殖抑制効果

5ppm以上のクルクミンが、病原性の高いPg菌の増殖を抑制することが研究により判明しました。



クルクミンの効果2:バイオフィルム※1の形成阻害効果

人の唾液でコーティングしたチャンバーにS. gordoniiを接種し培養した後、クルクミンを30分間作用させ、Pg菌(P. gingivalis)を添加、培養しました。



Pg菌とS. gordoniiにクルクミンを添加して混合バイオフィルムの形成量を確認したところ、Pg菌のバイオフィルム形成量をそれぞれ約50、80、90%阻害しました。

※1) 微生物が固相表面に形成した集合体。口腔内のデンタルプラーク(歯垢)はバイオフィルムの典型例。抗菌剤や抗体はバイオフィルムの中へ浸透しにくいため、薬剤の効果を発揮させるには一度バイオフィルムを機械的に破壊する必要がある。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット

クルクミンの効果3:歯周組織侵入阻害効果

ヒトの歯肉上皮細胞(Ca9-22)に歯周病菌Pg菌が出す毒素であるベシクル※2およびクルクミンを添加して培養しました。 その結果、クルクミンによるベシクルの細胞への付着・進入阻害効果が確認されました4)



※2) ベシクル:歯周病原因菌であるPg菌が恒常的に分泌している外膜小胞。ベシクルにはPg菌が持つ毒性因子が含まれており、細胞内に取り込まれることで歯周組織にダメージを起こすと考えられている。


クルクミンの効果4:細胞修復促進効果

口腔内において、歯肉上皮細胞は歯周組織のバリアとして機能し、有害な物質や細菌の侵入を防ぐ働きをしています。歯肉上皮細胞が損傷を受けると、歯周病原因菌が歯周組織に侵入し組織破壊が引き起り、慢性の炎症が続いたり、損傷の回復が阻害されたりします。
本研究では、培養した歯肉上皮細胞に人工的な創傷面を作り、ベシクルとクルクミンを添加して観察しました。クルクミンを添加すると創傷面積が縮小し、細胞の修復促進効果が得られました4)



さらに、最近の研究で、クルクミンは他の成分と比較して、歯周病の原因菌(Pg菌)の増殖を選択的に抑制するという特徴が明らかになりました。
ヒトは、病原菌への免疫力や抵抗力を保つため口腔内に「常在菌」を約100億個有しているといわれていますが、この特徴によって、ヒトの健康上必要とされる菌をそのままに、病原性の高い菌のみを増殖抑制することが期待されます。

クルクミンの効果5:クルクミンとその他植物エキスの菌増殖抑制効果との比較

クルクミンとその他植物エキスの菌増殖抑制効果を比較。
菌培養後に菌が生えなかったときの最小濃度を求めました。



クルクミンの効果6:可溶化したクルクミンのP. gingivalisに対する増殖抑制

また、歯周病の原因菌(Pg菌)に対する高い増殖抑制効果を得るためには、クルクミンが溶けていて、かつ黄色を維持することが大切だということもわかってきました。
サラヤでは、共同研究講座で得たこの技術を口腔ケア剤の開発に応用しています。



クルクミンの効果7:黄色クルクミンのP. gingivalisに対する増殖抑制




【Topics】歯周病の原因となる病原菌

一般的に、成人の口腔内には700種類を超える細菌が生息するといわれており、幼少期からの生活習慣や生活環境等を背景に様々な細菌叢を形成しています。これらの口腔内細菌の中で歯周病に関わる細菌は、病原性の違いによって6つに色分け分類され、ピラミッドで表わされます2)。

ピラミッドには上下関係があり、下層に分類される細菌は病原性が低く、頂点に上がるにつれ、重度の歯周病に影響すると言われています。ピラミッドの頂点に位置する「P. gingivalis (Pg菌)」「T. denticola」「T. forsythia」の3菌種は「レッドコンプレックス」と呼ばれ、特に病原性が高いと考えられています。



これらの歯周病菌は口腔内に常在化しており、完全に除去するのは不可能であると考えられています。そのため、近年は歯周組織のもつ防御力と病原菌の均衡を保つ"オーラルケア"が重要と考えられています。

Pg菌(P. gingivalis)とは

Pg菌は、「偏性嫌気性細菌」という分類に属する細菌であり、酸素がない環境でしか増殖しません。そのため、歯周ポケットのデンタルプラーク(歯垢)など空気の届かない場所で増殖し毒素を分泌します。さらに、歯周病が進行し歯茎から出血すると、血液に含まれる成分(ヘミン鉄)によってどんどん増殖するため、悪化のリスクが高まります。また、近年ではPg菌はヒトの歯周組織に侵入することもわかってきています3)。


関連リンク


大阪大学大学院歯学研究科 先進口腔環境科学(サラヤ)共同研究講座

【参考文献】

  1. Izui S et al. Antibacterial activity of curcumin against periodontopathic bacteria. J Periodontol, 87(1): 83-90, 2016.
  2. Socransky SS, Haffaiee AD. Dental biofilms: difficult therapeutic targets. Periodontol 2000, 28: 12-55, 2002.
  3. Amano A et al. Host membrane trafficking for conveyance of intracellular oral pathogens. Periodontol 2000, 52(1): 84-93, 2010.
  4. Izui S et al. Inhibitory effects of curcumin against cytotoxicity of Porphyromonas gingivalis outer membrane vesicles. Arch Oral Biol, Vol124, 105058, 2021.