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セーブ・ザ・チルドレンへの支援

2024年(SC)の活動報告

2023年3月から2024年7月までに実施したモロト県における生計向上支援と母子栄養指導を通じた栄養改善事業の1年目が無事に完了いたしました。
期間中に、20人の農業普及員、100人の農民、400人の母親グループのメンバーが農業の研修を、15人の保健施設職員と32人の村落保健チームのメンバーが栄養に関する研修を受講しました。栄養啓発セッションに参加した母親や地域住民の数は、目標であった1,600人を大きく上回り、4,252人にのぼりました。さらに、子どもたちの栄養状態を確認するため、地域の2歳以下の子ども5,525人の栄養スクリーニングを実施しました。
農家世帯の生計向上と母子栄養の改善について、現地に多くの変化がもたらされ、本事業の参加者らからは、「家で野菜の栽培ができるようになり、子どもたちに、栄養のある補完食を食べさせることができるようになった。」「収穫した野菜から、現金収入を得られるようになった。」「母親たちが子どもの栄養不良を早期に発見できるようになった。」「地域内で、栄養不良の子どもが減った。」などといった声が聞かれています。一方で、本事業後も、事業地内に栄養不良の子どもはまだおり、継続的な支援の必要性を改めて感じさせられました。また、事業期間内に干ばつに見舞われ、野菜の収穫量に課題が残る農民もおり、事業地における環境の厳しさを痛感しつつも、今後に生かすべき教訓を得られたと考えております。1年目の事業を通し、今後2年間事業を継続して実施するための基盤を築くことができました。

1.事業対象地の子どもたちを取り巻く課題

ウガンダの北東部に位置するモロト県では、住民の50%が急性食料不安または人道危機レベルの飢餓リスクにさらされており、多くの子どもたちの命が脅かされています。食料不安は子どもたちの栄養状態に大きな影響を与え、乳幼児死亡のほぼ半数(45%)が低栄養に起因します。さらに、栄養不良は子どもの認知発達の遅れや学力の低下につながり、子どもたちの健全な発達を妨げます。
これまでウガンダの西部地域で母子の栄養改善事業を実施してきました。その知見を活かし、2023年3月より、さらに環境が厳しい東部に位置するカラモジャ地域にて本事業を開始しました。同地域には歴史的に多数の牧畜民が居住しており、長年の間、牛の強奪といった争いが絶えず、社会発展が大いに阻まれてきたという背景があります。現在においても、貧困率は60.2%とウガンダ国内で最も高くなっています。同地域では、主に畜産と雨に頼った天水農業で生計を立てていますが、頻繁に干ばつが発生するため、人々は食料援助に頼らざるを得ない状況です。本事業地である同地域のモロト県の子どもたちは、4割近くが慢性的な栄養不良の状態にあります。

2.本事業の目的

子どもの低栄養が深刻であるウガンダ・モロト県で、農・畜産業支援による世帯の生計向上、母子栄養に関する保健サービスの改善、セクター間の連携促進の活動を実施し、コミュニティが主体となった栄養改善に向けた活動を定着させ、5歳未満の子どもの栄養改善を目指します。

3.活動報告と主な成果

子どもの発育阻害を防ぐには、家庭での食料の生産、母親の妊娠期における栄養改善、産後の母乳育児の推進、栄養バランスの良い補完食の適切な時期の導入などが大変重要です。そのために3つのカテゴリー(1)農・畜産業支援を通じた生計向上、(2)母子栄養に関する保健サービスの改善、(3)セクター間連携の活動を実施しました。

活動(1)農・畜産業支援を通じた生計向上

モロト県のタパッチ準郡で、100人の農民に対して農業技術指導と農業資材の提供、小規模生産者グループの設立を行い、農家の生計向上を支援しました。

混合農業普及員への技術研修

コミュニティレベルの行政官であり、本事業において、農・畜産業についての技術を農民に指導する20人の混合農業普及員への技術研修を行いました。ウガンダ国立農業研究機構(NARO)の専門家が講師を務め、参加者らは、気候変動に対応した農法、種子や農業資材の使用方法、持続可能な土地管理、作物の害虫と病気など様々なトピックを学びました。

農民への技術研修

上記の研修を受講した混合農業普及員が農民に対し、同様の研修を行いました。加えて、ビジネススキルに関する研修も実施し、農民らは、市場分析、ビジネスアイデアの開発、ビジネスプランの作成、予算管理、帳簿、マーケティングなどを学びました。本研修を通じて、これまで農業または畜産のみに頼ってきた農民が、自身の生計手段を多角化し、かつ農産物の価値を高めて生計を向上させる方法を学びました。

小規模生産者グループの設立・モデル農園の開園

各グループ20人の農民で構成される5つの小規模生産者グループを設立しました。各グループにモデル農園(小さな共用の畑)も開園し、かつ、同園内に小規模灌漑施設を建設することで、農民らが実践的な研修を受けられる環境を整えました。また、肥料や種子等の農業資材購入のための資金を調達する能力を高めるため、各生産者グループで村貯蓄貸付組合をつくり、貯蓄や投資についての研修を行い、対象農家が効果的に組合を活用できるよう取り組んでいます。

農業資材の供与

グループのメンバーが共同で使用できる鍬や一輪車などの農機具や、野菜の種子を提供しました。また、農業に欠かすことのできない水へのアクセスを確保するために、足踏み式ポンプを購入し、供与しました。自転車のペダルのような足踏みが付いた手動式のポンプで、足で踏むと水をくみ上げ送ることができます。燃料を使わずに動くため、コストもかからず環境にも優しいと言えます。農民らは、モデル農園だけでなく、各自が自宅の庭などに開墾した農地にて、供与した資機材を活用し、様々な野菜を栽培しています。

代替の生計手段の導入

気候など、外的要因の影響で、農業から十分な食料や収入が得られない場合に備え、農業以外に生計手段をもつことがとても重要です。そのため、本事業では、サラヤの寄付により事業地の環境に適した養蜂とキノコ栽培を取り入れました。養蜂に関しては、地域で手に入りやすい丸太等を用いた伝統的な巣箱も用いつつ、より生産性の高い改良式の巣箱を導入しました。さらに防護服やブラシ等の供与や養蜂の手法や蜂蜜製品の開発等に関する研修も行いました。キノコ栽培についても、栽培に必要となる道具を供与し、研修を行いました。


活動(2)母子栄養に関する保健サービスの改善


対象準郡の保健サービスを改善するため、地域の保健医療人材への研修、妊産婦や子どもの保護者への栄養啓発セッション、栄養スクリーニング、栄養相談窓口の設置等を実施しました。

保健医療人材への母子栄養についての研修

保健医療施設職員と村落保健チームへの栄養研修を行いました。モロト県保健局栄養担当主席官およびモロト地域病院栄養士を講師に招き、栄養の概念、食品群、バランスの良い栄養摂取、栄養不良とその兆候、栄養不良に関する記録のつけ方及びフォロー方法、妊娠時から授乳中の栄養管理、乳幼児への授乳と離乳食の与え方など、幅広い内容について学びました。さらに、地域で手に入りやすい野菜や果物を使用し、実際に調理実演なども行いました。

地域の母親・住民を対象にした啓発活動

上記研修を受けた保健医療施設職員や村落保健チームが中心となり、毎月定期的に、地域内5ヶ所の保健施設で、母親や地域住民を対象に栄養啓発活動を行いました。参加者らは、1回の食事で多くの栄養を摂取することのできる調理の方法や、子どもの補完食の新しいレシピ、手洗いうがいの重要性など、衛生管理についても学びました。


栄養啓発活動に参加する母親たち

栄養スクリーニング(栄養状態の評価)

村落保健チームが村落での栄養スクリーニング活動を行いました。2歳未満の子どもの栄養状態を四半期に一回評価し、重度・中等度の栄養不良と診断した場合は、各子どもの栄養状態に合わせ、病院や保健施設へ紹介しました。また、栄養不良と判断された子どもやそのリスクがある子どもをもつ世帯を継続的に訪問、経過を観察・フォローアップしています。

母親グループの設立

事業地域において、計400人で構成される20の母親グループを設立しました。この取り組みでは、母親たちが毎月定期的に集まり、栄養に関する知識や経験を共有することで相互の学び合いを促進しています。さらに、5つの保健施設の土地を活用し、共同で小規模農園を作る活動も行っています。母親たちは、農業普及員の定期的な技術支援のもと、苗床作りから収穫までを一貫して行い、栄養を確保するための農作物を自分たちで育てる方法を学んでいます。収穫された野菜は、家庭で消費したり、市場で販売したりすることで収入向上にもつながります。

栄養相談窓口の設置と強化

事業地域内の5つの保健施設に栄養相談窓口を設置しました。相談窓口では、訪問した母子の栄養状態を確認したり、栄養についての指導を受けることができます。これらの施設には、栄養スクリーニングのための、体重計や身長計、上腕周囲径テープ等も備え付けてあり、事業地域で乳幼児の栄養・保健に関するサービスが受けられるようになりました。

活動(3)セクター間連携

3日間の母子栄養に関する研修をモロト県やタパッチ準郡行政府の他セクターの職員に対して行いました。また、定期的に県栄養調整委員会や準郡栄養調整委員会を開催し、両者のパートナーシップ強化し、同地域内の子どもの栄養問題を改善するための政策改革や戦略を協議しました。

4.事業を通じた成果

作物の収穫と栽培

本事業において、農業の研修を提供するとともに、実際に農作業に必要な農園や、野菜の種子を含めた農業資機材を供与することで、研修を受けた農民や母親グループのメンバーらが実際に作物を栽培し収穫できるようになりました。研修参加者らは、実際に自宅の庭に農地を開墾し、家庭菜園に取り組んでおり、ササゲ、ニンジン、トマト、カボチャなどの野菜やその他の穀物を栽培しています。サラヤからのご寄付で購入した野菜の種子や鍬、じょうろ、噴射機、足踏み式ポンプは、日々の農作業に欠かせないものとなっています。特に足踏み式ポンプの供与は、参加者らに大変喜ばれました。雨不足のため、この数年間畑の作物はすべて枯れてしまい、一度も収穫ができていなかった世帯でも、ポンプのおかげで水が撒けるようになり、今年は野菜を収穫できるようになった、という声が多く聞かれました。収穫した作物の多くは、家庭内で消費していますが、なかには一部を販売し、現金収入を得られるようになった農民もいます。

収入源の多角化

養蜂やキノコ栽培の導入を通し、農家らは自身の収入源を多角化する手段を得ることができました。養蜂については、まだ蜂蜜の収穫を待っている段階ですが、キノコ栽培については、キノコ栽培を導入した5グループで、既に計20kgを収穫することができました。

子どもの栄養状態の改善

本事業を通し、母親や養育者らの行動に変容が見られました。例えば、生後6ヶ月までの完全母乳育児を実践している母親の割合は事業前の71.4%から74.5%まで増加しました。また、調理実演での学びを活かしながら、家庭でソルガム(現地の穀物)や牛乳、栽培した野菜などを用いた補完食を作れるようになりました。その結果、最低食事水準 を満たす2歳以下の子どもの割合は、事業実施前の2.5%から4.3%まで増加しました。


栄養不良の子どもへの支援

事業期間中に、2歳以下の子ども計5,525人の栄養スクリーニングを行いました。615人が中等度の急性栄養不良、148人が重度の急性栄養不良であったため、適当な医療機関に紹介しました。また、啓発活動で栄養不良の症状について学んだ母親が、実際に自身の子どもの栄養不良を見分けることができるようになり、母親自身から必要な支援を求められるようになりました。

5.今後について

本年8月から、本事業の2年目の活動を開始しました。2年目では、より多くの農民や母親・保護者、そして子どもにアプローチをしていく予定です。これまで行ってきた活動のなかでの学びや成果を生かし、今後さらに、一人でも多くの子どもの健全な成長や発達を支えられるよう、励んで参ります。