2023年(SC)の活動報告
カセセ県における生計向上支援と母子の栄養改善事業に対し、2021年7月より2023年2月まで事業期間全体で、直接受益者1万7千人、間接受益者(直接受益者の家族、親戚、知人、近隣住民等)4万人に、支援を届けることができました。
生計向上活動に参加した農家世帯、農業局関係者、また栄養改善ワークショップに参加した母親や保護者、保健医療施設職員、村の保健ボランティアチームから多くのコメントが寄せられました。「この事業に関わることができて本当に良かった。食べ物に気を使うようになって、家族の体調が非常に良くなり、皆笑顔で食事ができています。」「今まで貧しい生活が続き、どうすれば貧困から抜けられるのか、見当もつかなかった。農業の方法を教わって収穫が劇的に増え、野菜や果物を新たに栽培できるようにもなったし、養豚にも取り組んでいる。」など、住民に変化がみられています。
一緒に活動してきた地方政府の職員からは、「本事業のアプローチが非常に効果的であることが分かり、今後の栄養政策の模範としたい。引いては計画策定の要点を学びたく、事業計画書、予算書の共有をいただければ幸いである。(農業局、保健局)」等のコメントもあり、今後はカセセ県の人々が活動を担っていく予定です。農家世帯の生計向上と母子栄養の改善について、現地に多くの変化がもたらされました。活動と成果について報告します。
1.事業対象地の子どもたちを取り巻く課題
アフリカ東部に位置するウガンダでは、子どもたちの栄養不良が深刻な問題となっています。5歳未満の子どものうち発育阻害(身長が年齢相応の標準値に満たない)の状態にある子どもの割合は29%であり、最低食事水準 を満たしている乳幼児の割合は全体のわずか14%です。さらに、本事業の対象地であるカセセ県では、5歳未満の子どもの2~3人に1人(40.6%)が発育阻害であり、子どもたちの栄養不良がより深刻な状態です。また、母親の栄養状態は乳幼児の栄養に影響を与えますが、カセセ県の妊婦の32.5%が鉄欠乏性貧血にあります。幼少期の栄養不良は、脳や身体の健康な発達を妨げ、その後の就学や労働収入に大きな影響を及ぼすなど、将来にわたって子どもたちに負の影響を与えることがわかっています。
子どもの栄養不良に関係する要因のひとつとして、世帯の所得水準があげられます。ウガンダの人口一人当たりの国民総所得は、世界192ヵ国中178位(780米ドル)であり、一人当たりの所得が極めて低いと言えます。主な生計手段は農業であり、国民の69 %が農業に従事していますが、農家の多くが生産性に課題を抱えており、十分な所得を確保できていません。
2.本事業の目的
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもの栄養不良が深刻であるウガンダ・カセセ県のマリバ準郡・ニャキユンブ準郡・カルサンダラ準郡で、母子栄養に関する保健サービスの改善、農業支援を通じた生計向上、保健と農業のセクター間の連携促進の活動を通して、コミュニティに栄養改善に向けた活動を定着させ、5歳未満の子どもの栄養状態を改善することを目指して事業を実施しました。
また、サラヤではこれまで10年間以上に渡り、ウガンダにおける「100万人の手洗いプロジェクト」を実施してきました。とりわけ、新型コロナウイルス感染症の影響がある中、普段にも増して、手洗いの励行及び衛生環境の保持が強く推奨されています。これまでの取り組みがウガンダでさらに根付くよう、本事業では受益者や保健医療施設に対して、衛生用品(手指消毒剤)を積極的に導入し、その使用を進めました。
3.活動報告と主な成果
子どもの発育阻害を防ぐには、家庭での食料の生産、母親の妊娠期における栄養改善、産後の母乳育児の推進、栄養バランスの良い補完食の適切な時期の導入などが大変重要です。そのために3つのカテゴリー(1)農業を通じた生計向上、(2)母子の栄養改善のための保健サービスの改善、(3)保健と農業のセクター間連携のための子どもの栄養についての理解促進の活動を実施しました。
活動(1)農・畜産業支援を通じた生計向上
本事業対象の3準郡で、200の農家世帯に対して農業技術指導と農業資材の提供、また小規模生産者グループの設立と農業資金の調達強化を行い、農家の生計向上を支援しました。
支援を通じて、対象農家の農業生産高が増加し、うち76%が支援前に比べて20%の収入増加を達成しました。また、200世帯の農家を10のグループに分け、グループ毎に貯蓄や農業のための投資を行うようになりました。
農家への技術指導
200世帯の農家が、敷作、掘割、河川水路管理など、生産高増加のための農業技法を学び、また、野菜・果物栽培方法や雑草や害虫駆除、生産物のマーケティングについて学びました。
農業資材の供与
地域にデモンストレーション農園を設置し、農業指導員が農家に対して実践的な農業指導を行うとともに、種子、背負い式噴霧器、農機具等を供与しました。
生計の多角化のための支援
青果の栽培以外に、家畜(ヤギ、鶏、豚)の管理、椎茸栽培について技術指導を行い、対象農家はより多角的な生計手段を確保できるようになりました。
小規模生産者グループの設立
上記の小規模生産者グループに 、グループのガバナンス、ビジネスプランの策定方法、農作物の市場での販売について研修を行いました。
農業資金調達システムの強化
各グループによる村の貯蓄貸付組合の組織を支援し、グループは毎週1回の積み立てと、ビジネスプランに沿った借入・投資を開始しました。
活動(2)母子栄養に関する保健サービスの改善
対象3準郡の保健サービスを改善するため、地域の保健施設スタッフへの研修、栄養相談窓口の設置、保護者への栄養啓発セッション、栄養不良スクリーニングなどを実施しました。
事業終了後に質問票調査を実施したところ、右表の通り事業開始前の2020年の数値と比較して、母子の栄養に関するすべての指標が改善していることが分かりました。特に乳幼児の栄養摂取にとって重要な生後6か月の授乳については100%を達成し、そのほか最低食事水準も35.4%と開始前の5.7%から大きく改善しました。
事業開始時と事業実施後の母子の栄養に関する指標の変化
保健医療人材への母子栄養についての研修
3準郡にある15の地域保健施設のスタッフ35人と、村保健ボランティアチーム86人に対して、母子栄養に係る研修を行いました。参加者は栄養不良と身体的特徴、食品群と各群の栄養的特徴、栄養アセスメント、栄養カウンセリング、授乳と補完食、調理実演など、幅広い内容について学びました。研修実施後は、カセセ県の栄養指導官および栄養士がこれら地域の施設を巡回して、研修後の実践のフォローアップとモニタリングを実施しました。
栄養相談窓口の設置と強化
3準郡内の6つの保健施設に栄養相談窓口を設置しました。相談窓口では、訪問した母子の栄養状態を確認したり、栄養についての指導を受けたりすることができます。栄養状態の評価のために、吊り下げ式乳児用体重計、乳児身長計、体重計、身長計、上腕周囲径(MUAC)テープ、ヘモグロビン検査キットを、各窓口に供与しました。
子どもの保護者を対象とした栄養啓発セッション
15の保健施設で、定期的に保護者に対して栄養啓発セッションを実施しました。内容は、栄養の基礎や母乳と授乳の重要性、家庭菜園の重要性とつくり方、離乳食の調理実演などについてでした。事業期間に各施設で10回、のべ16,001人が参加しました。家庭での栄養管理は父親ら男性の協力が不可欠ですが、これらセッションには男性も3,705人参加しました。
家庭訪問と栄養不良スクリーニング
妊婦・授乳婦、栄養不良のリスクがある2歳未満の子どもをもつ保護者の家庭を訪問し、栄養状態の評価や栄養指導を行いました。また、3か月に1度MUACテープを使って2歳未満児9,089人の栄養スクリーニングを行い、栄養不良と判断された178人を保健医療施設に紹介し、医療サービスにつなげました。
活動(3)保健と農業のセクター間連携のための子どもの栄養についての理解促進
事業対象地の保健と保健セクターの行政関係者の連携のため、定期会合を開催しました。これまで国が策定した「ウガンダ栄養行動計画」では不明確であった、県以下の行政機関におけるセクター間連携について協議し、関係者マッピングや活動計画策定、予算計画策定などを行いました。また、会議の前には関係者に対して母子栄養についての研修も実施し、行政のキーステークホールダーが母子栄養についての課題を共有し、望ましい対応策について理解したうえで会合に参加できるように工夫しました。
2022年10月に開催した会議では、次会計年度である2023/24年に向けた予算要求について話し合われ、栄養課題改善に向けた各セクターの優先的活動が共有されました。また、財務局からは積極的に予算策定のための関係者への指導がされました。その結果、カセセ県地方政府保健局、農業局、財務局、地方政府局、教育局、社会開発局、水・環境局、天然資源局の各セクターで、栄養改善係る活動の予算がカセセ県政府に承認されました。
5.今後について
2023年2月を持ちまして、カセセ県での事業は終了いたしますが、引き続き、ウガンダ国モロト県にて同様の事業を開始してまいります。モロト県はウガンダ東部のカラモジャ地方に位置し、同地方はウガンダで最も貧困率及び低栄養の割合が高い地域です。カセセ県における本事業の知見を活かしつつ、モロト県でも生計向上と栄養改善支援を中心に、母親と子どもたちの暮らしの改善に貢献していきます。





