2021年(SC)の活動報告
ウガンダ国カセセ県における生計向上支援と母子の栄養改善事業の完了報告
1.事業対象地の子どもたちを取り巻く課題
ウガンダでは、国民の69%が農業に従事しており、農業が同国GDPの23%を占めています。 これを背景に、同国政府の「国家開発計画」では農業を経済開発の中心セクターの一つとして、その成長を推進してきました。特に農業産業化及び農業競争力の強化を挙げ、国民の食料安全保障向上を推進するとしています。一方で、人口一人当たりのGNIは、世界192か国中178位(780米ドル)に位置し、一人当たりの所得が極めて低いことが深刻な課題でもあります。
所得水準が低いことにより、特に農村地域に暮らす母子は、保健サービスへのアクセスや栄養不良の状況が依然として厳しい状態にあります。5歳未満の子どもの発育阻害(身長が年齢相応の標準値に満たない)は29%であり、最低食事水準を満たす乳幼児の割合は14%に留まっています。また、鉄分不足により、6ヶ月以上5歳未満の子どもの53%、15-49歳の女性の32%が貧血です。乳幼児期の低栄養は、身体機能だけでなく、認知機能や学習能力の低下に繋がり、妊娠可能年齢女性の低栄養は胎児発育を妨げる大きな要因の一つとなっています。これら課題への対応として、ウガンダ保健省は「性と生殖に関する健康と母子保健計画(2016/17-2019/20)」 を発表し、2020年までに5歳未満の子どもの発育阻害率を現在の29%から25%に下げる目標を設定しました。
2.本事業の目的
こうした課題に対処するため、生計向上支援及び母子の栄養改善事業では、ウガンダ西部地域の中でも栄養不良の割合が他と比較して高いカセセ県の母子を支援の対象とし、地域の保健医療施設での栄養啓発活動を促進する他、農家の生産力や耕作知識の向上に向けた支援事業を実施しています。また、10年以上に及び取り組んできた、ウガンダにおける「100万人の手洗いプロジェクト」をさらに促進させられるよう、本事業では受益者や保健医療施設に対して、サラヤの衛生用品(手指消毒剤)を積極的に導入し、その使用を進めました。とりわけ、昨年より新型コロナウイルス感染症の影響が世界的に深刻である中、ウガンダ国内においても、手洗いの励行及び衛生環境の保持がこれまで以上に強く推奨されており、感染症予防の目的にも資する活動を併せて展開しました。
3.活動報告と主な成果
活動(1)生計向上分野:農業普及員および農家世帯への研修、農家組合の能力強化
事業地の農家らはこれまで「どのように畑を耕すのが効果的なのか。どういった種(あるいは株)をどのように植えるのが良いのか。雑草や害虫を取り除くのがなぜ大切なのか。」といった農法の基礎を学ぶ機会がありませんでした。彼らは「親の世代から、『だいたいこの時期に種をまいて、雨が降ったら育っているのを確認して収穫するんだ。』と教えられた。」と言います。
農地の畑打ちを開始したところ
カセセ県政府には農業局があり、同局の農業普及員(以下、普及員)を通じて農業の振興に努めています。普及員は個々の農家を指導する立場にありますが、現状、一人の普及員に対し、2,000世帯を超える農家のサポートをするため、十分な指導を行う体制が整っていません。そのため本事業では、1年間に200世帯の農家を指導するために、50人の普及員を集め、一人当たり4世帯の農家を担当できるようにしました。まず、普及員に対して本事業の農法研修(簡易な畜産を含む)を実施しました。その後普及員は各自が担当する農家を回りながら研修内容を伝えていき、さらに農家が研修内容を生かして実践できているか定期的に確認しに行くという方法を取ることによって、農家世帯と普及員の連携を強化しました。
教わったとおりに実践し、バナナ、キャッサバ、豆、メイズ(とうもろこし)等を植え、栽培を試みた農家からは「生産量が5倍になったので、販売した後の収入が以前に比べて格段に上がった。」、「自家消費できる量が増えたので、家族がより多くの食物を摂るようになり、健康的になったと思う。」といった声が上がりました。
農家世帯の家庭菜園でとれたかぼちゃとなす
また、200世帯の農家を20世帯ずつ10のグループに分け、組合を作ることによって、耕作中に得た知見を意見交換したり、皆で資金を出し合って組合として貯蓄を開始したりするなど活動を拡大していきました。組合で貯めている資金は、組合員である農家世帯が必要な時に借り入れ、農機具や種、あるいは養鶏用の鶏等を購入するのに活用しています。また、生産活動に限らず、同資金に福祉枠を設け、子どもの学費や薬の購入に充てたりもしています。
本事業では母子の栄養摂取改善を目指していることから、農家世帯に対して既存の生産活動を指導、支援するだけでなく、栄養摂取の概念や重要性を理解してもらい、より多くの種類の作物を栽培するよう働きかけました。例として、農家の自宅施設内に家庭菜園を設けたことが挙げられます。今では200世帯全ての農家が同菜園を作り、トマト、なす、キャベツ、ホウレンソウ、人参、玉ねぎ等栄養分の高い野菜を育てています。これらの野菜は各農家世帯で収穫、調理され、日々の食卓に並びます。
「ここ数年、雨季と乾季の境目があいまいになっており、耕作が上手くいかないという経験をよくしていました。収穫高が激減した場合など、子どもを学校にも村の診療所にも行かせられないことがありました。しかし、セーブ・ザ・チルドレンの研修を受けた後は、今まで10袋のメイズしか収穫できなかったのが25袋になるなど生産高が格段に上がりました。おかげで、安定して家族の者を食べさせることができ、生産したものを自宅倉庫に保管したり、より多くの量を売ったりできるので、余裕が出てきて嬉しいです。」
農家の男性
活動(2)母子の栄養改善分野:保健医療施設職員への研修、母親らへの栄養指導
マトケ(甘くないバナナを蒸してつぶしたもの)、ポショ(とうもろこしの粉を練ったもの)といった言葉はウガンダにいると毎日現地の人々の口から聞かれます。日本人にとってのお米と同じで、ウガンダの人々にとっての主食です。
現地の人々はマトケ、ポショのような炭水化物をメインに、野菜、果物、肉や魚を食べますが、特に農村に住む人々は一日に2品目しか食べないという場合もあり、摂取食品目は圧倒的に少ない状況です。日本人が意識するような「健康のために一日30品目の食品を」という概念は、ウガンダには浸透しておらず、栄養摂取の考え方自体が一般に広まっていません。
保健医療施設で栄養状態の測定を受ける幼児
ウガンダ政府は、『ウガンダ栄養行動計画』を2011年に策定し、栄養摂取を推奨してきましたが、特に地方では実践までに時間がかかっています。本事業では、カセセ県対象3準郡の保健医療施設職員らおよび同地域の保健ボランティアチームに母子の栄養摂取の概念を理解してもらい、地元の村人に知識を伝えていくよう活動を進めてきました。
同職員の多くは、これまで栄養について学習したことがなかったため、研修を設け、栄養とは何か、栄養状態の測り方、栄養不良、授乳と離乳食といった内容を学習しました。例えば、栄養の概念に関して、日本でもよく知られている「三色食品群」を研修に取り入れ、「赤(タンパク質)」は体を作るもの(肉、魚、卵、牛乳など)、「黄(炭水化物)」はエネルギーのもとになるもの(マトケ、ポショ、いも類など)、「緑(ビタミン、ミネラル)」は体の調子をととのえるもの(野菜など)、この3つの色をまんべんなく摂ることで、バランスの良い食事になることを理解してもらいました。
また、研修が終わった後も確実に母子の栄養指導が継続されるよう、職員の復習用の教材、母親に栄養カウンセリングを実施する際に使用する教材なども作成しました。
当事業にて供与した乳幼児用体重計で男児の体重を計測
本活動では、母親や子どもたちが体調を崩して保健医療施設に診察を受けに来た際、職員らが栄養の話をし、上記の三色食品群を日々の食事に取り入れるよう心掛けてほしい、そうすれば体調も良くなっていくと母親らに説明しました。さらに、生計向上分野の農家世帯と同様、施設内家庭菜園を設け、診察に来た母親らに栽培中の野菜を見せながら、自宅に少しスペースがある場合は、家庭菜園を作ってみるよう勧めました。
施設を訪れる母親らに加えて、上記保健ボランティアチームが対象地域を回り、各世帯の母子の栄養状態を確認する活動も行いました。栄養不良の徴候が見られた場合、施設で受診するように勧めるなど予防的な観点から母子の健康改善を目指してきました。
保健医療施設で診療を待つ母子
「赤、黄、緑色の食べ物を一回の食事に用意するようになって、家族の体調が良くなってきています。自分の母乳の出もだいぶ良くなりました。家族の体調が改善しているので、今までのようにしょっちゅう診療所に連れて行かなくてよくなり、出費を抑えられています。」
ステファン・ンクルジザ保健医療施設長





