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セーブ・ザ・チルドレンへの支援

2020年(SC)の活動報告

ウガンダにおける南スーダン難民支援事業

1.事業対象地の子どもたちを取り巻く課題

2016年7月に南スーダンのジュバで生じた武力衝突により、多くの南スーダン難民がウガンダに避難し、現在も88万人を超える南スーダン難民がウガンダで避難生活を送っています。南スーダン国内は依然として非常に不安定な情勢であり、難民の多くは未だ南スーダンに戻ることが出来ない状況が続いています。避難生活が長期化する中で、得られる食料は限られており、ウガンダに居住する5歳未満の南スーダン難民の子どもの急性栄養不良率は平均10%と、高くなっています。また、18歳未満の妊娠・出産も見られており、母と子の命と健康を守るため、母子栄養や保健に関する取り組みの強化が求められています。
子どもたちが健やかに成長していくためには、母親たちが子どもの栄養に関する正しい知識を得ることや、基礎保健サービスの改善が欠かせません。さらに、教育の提供、子どもたちを暴力や虐待から守るための活動など、難民生活を送る子どもたちとその家族に対し、包括的な支援が求められています。

2.本事業の目的

ウガンダ北西部、アルア県(3ヶ所)、アジュマニ県(3ヶ所)、キリヤンドンゴ県(1ヶ所)の計7ヶ所の難民居住区にて、母子の栄養・健康状態改善のための活動、子どもの保護に関する活動、就学前教育プログラムの運営を通して、子どもの包括的な発達の促進を目的としています。

3.前年度までの事業の進捗

2016年8月にウガンダにおける南スーダン難民支援の事業を開始し、特に脆弱な子どもたちに対する個別支援、「こどもひろば」における活動の実施、子どもたちが困難なく初等教育に進むことができるようになるための就学前教育、母子に対する栄養指導などの支援を行いました。
2018年6月からは、基礎的な保健サービスを受けることができない母子に対し、定期的に健康診断や予防接種などの保健サービスを提供しました。さらに、これらの活動を行う場所に、石鹸や手指消毒液を設置し、個人衛生に関する啓発を行うことで、難民の衛生状態の改善にもつながりました。

3.活動報告と主な成果

活動(1)栄養・保健分野:「母と子のためのスペース」の運営、乳幼児や妊産婦の栄養・保健状態の改善

全7ヶ所の難民居住区の「こどもひろば」内に、母親が安心して授乳したり、子どもと触れ合ったりすることのできる「母と子のためのスペース」を設置しました。このスペースを訪れる妊産婦に対し、栄養指導カウンセラーや栄養指導ボランティアが、授乳についての助言を行ったり、子どもの栄養状態を測定し母親へ助言を行ったり、必要に応じて保健施設へ紹介したりしました。また、居住地から距離があり、このスペースに来ることが難しい母子には、家庭訪問による栄養指導も実施しました。


補完食の調理方法を学ぶ母親たちの様子

本活動では、「母と子のためのスペース」を訪れる妊産婦や、幼い子どもを養育する保護者向けに、補完食や妊産婦向け栄養研修、調理実習も行いました。地域で安価に入手しやすい野菜や肉、豆類、果物を実際に用いて、赤ちゃんが食べやすく栄養価の高いペーストの作り方などを実演しました。また、地域の父親たちの参加も促し、男性の積極的な育児参加につなげられるよう努めました。

会場には必ず清潔な水と石鹸、手指消毒剤を設置し、手洗いや飲料水用の設備に石鹸や消毒液を設置して使用を促すとともに、利用者に対して定期的に衛生意識向上のためのセッションを行いました。このような衛生習慣の向上は2020年3月以降、ウガンダでも国全体に大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染拡大防止にもつながっています。事業終了の2020年6月末までに延べ1,440人の親子がこれらの活動に参加しました。


「母と子のためのスペース」に設置した消毒液


保健サービスの提供

南スーダン難民の人々は、ウガンダのコミュニティにある保健センターで基礎的な保健サービスを受けることができますが、利用者が多く、常に非常に込み合っており、サービスを受けることができない人もいます。また、難民居住区からの距離があるために、保健センターに行くことが難しく、予防接種などを受けることができないケースも多くあります。

このため、本事業では、保健センターから医師や保健師が定期的に難民居住区に出向いて、難民の女性や子どもに対し、妊産婦健診や予防接種などのサービスを提供しました。2020年3月中旬から、ウガンダ政府の新型コロナウイルス拡大防止措置として、移動や集会の制限指示が出されたため、その後、本活動は継続できませんでしたが、2020年6月末までに、当初の計画を超える計4,403人の子どもと3,593人の母親がサービスを受けました。

活動(2)子どもの保護分野:「こどもひろば」の運営と、特別な配慮が必要な子どもや家族への個別支援

ケースマネジメントを通じた個別支援の提供

南スーダン難民の子どもたちの中には、紛争で親を失った子どもや、ウガンダに逃れる途中で家族とはぐれてしまった子どももいます。また、難民居住区の生活でも、虐待やネグレクト、児童労働や早婚など、子どもたちは様々なリスクを抱えています。そのため、本事業では、個別支援を必要とする子どもたちの特定、支援の提供や専門機関への付託、フォローアップを含む一連の支援(ケースマネジメント)を7ヶ所の難民居住区にて、1,930人の子どもたちに対して行いました。
支援内容は子どもの状況に応じて多岐にわたります。たとえば、衛生状態が悪く皮膚の感染症を患っている子どもに対しては、病院を紹介し治療が受けられるようにし、石鹸や寝具など衛生を保つための物資を提供し、さらに家族に対する衛生指導も行いました。また、ストレスを抱える子どもの心理社会的なサポート、学校で授業を受けるために必要な教材の支給、離ればなれになった家族の再会の支援なども行いました。また、本事業では、コミュニティにおいて子どもの保護の問題を予防し、早期発見・対応につなげる、地域のボランティアから成る「子どもの保護委員会」の能力強化と活動支援も行いました。


子どもの状況を聞き取る職員の様子

「こどもひろば」における活動

7ヶ所の難民居住区において、子どもたちが安心、安全に過ごすことのできる「こどもひろば」を設置し、室内外のスペースを利用し年齢に応じた活動を実施しました。2020年3月末時点で、3歳から17歳までの計6,644人(女子2,880人、男子3,764人)の子どもが利用しました。その後はウガンダ政府の新型コロナウイルス拡大防止措置に従い、「こどもひろば」での活動を一時休止しています。

「こどもひろば」では、歌やダンス、スポーツ、読み聞かせなどの活動によって情緒的な成長を支援するだけでなく、「こどもひろば」を利用する子どもの中に虐待などのリスクを抱えた子どもがいれば、その子どもを上述のケースマネジメントによる支援につなげるなど、子どもの保護を促進する場としての役割も果たしました。

活動(3)教育分野:就学前教育の提供

ウガンダでは、難民も基礎教育を受けることができますが、小学校に入学しても授業について行けないなどの理由で、卒業できない子どもも多くいます。子どもたちが初等教育における円滑な学びを促進するために、本事業では3歳から6歳の子どもたちを対象に就学前教育プログラムを実施し、「こどもひろば」における活動と同様に2020年3月末時点で計2,657人(女子1,395人、男子1,262人)の子どもたちが参加しました。就学前教育プログラムでは、就学前教育ボランティアが工夫を凝らして手作りした教材などを用いて、子どもたちが英語も含めた読み書きや算数を学び、手洗いや挨拶といった日常生活を送る上で必要な知識を習得し、習慣を身に付けることを支援しました。

保護者や地域の人々、小学校関係者などをセンターに招く「オープンデー」や、保護者・子どもによる、地域の小学校の事前訪問などを実施し、保護者も子どもも、不安なく小学校入学に備えられるよう支援しました。他の土地に移った子どもたちを除けば、ほぼすべての年長クラスの子どもたちが、地域の小学校に入学することができました。


就学前教育プログラムでアルファベットを学ぶ子どもたちの様子

5.今後について

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、当事業地において2021年1月末まで継続して事業を実施します。南スーダン国内の情勢は不安定な状態が続いており難民の帰還の目途もたっていないことから、長期化するウガンダでの避難生活において、子どもたちの心身の健やかな発達が妨げられることのないよう、包括的な支援を実施するとともに、地方行政やコミュニティの人々がより主体的に活動を実施して行くことができるよう、現地の人々の能力強化にも取り組んでいく予定です。

また、ウガンダでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、2020年3月下旬以降、政府主導による移動制限、集会制限が課されていますが、石鹸や手指消毒液などの活用、研修参加者の人数制限、直接訪問の代わりに電話でのコンタクトを増やすなどの感染症拡大防止対策を講じながら、難民居住区やその周辺地域の人々が、心身ともに健康を保ち、前向きにこの困難な期間を乗り越えることができるよう、支援を続けてまいります。