2018年(SC)の活動報告
ウガンダ北西部における南スーダン難民の子どもの保護と総合的な発達支援
1.事業概要
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2016年よりウガンダ共和国(以下ウガンダ)で南スーダン難民支援事業を実施しています。ウガンダ北西部アルア県(3ヶ所)、アジュマニ県(3ヶ所)、キリヤドンゴ県(1ヶ所)の難民居住区合計7ヶ所において、主に南スーダン難民の子どもたちを対象に、特に脆弱な状態に置かれた子どもへの個別支援を行っています。
また、子どもたちが安全・安心に過ごすことができる場所として「こどもひろば」の運営を行うとともに、「こどもひろば」を拠点として、就学前教育支援および栄養支援を含む子どもの総合的な発達の包括的な支援を実施しました。
2. 背景:事業地について
2016年7月に南スーダンの首都ジュバで発生した武力衝突の激化以後、ウガンダに避難する南スーダン難民の数は増え続けており、2018年8月時点で100万人を超えています。避難生活を送っている難民は多くの困難を抱えており、家族と離散したり、虐待やネグレクト、早婚等のリスクにさらされている子どもたちも多くいます。
さらに、中⾧期的な生活拠点となる難民居住区においては、子どもが安全かつ安心に過ごせる居場所が少なく、また、⾧引く避難生活の中で子どもおよび養育者のストレスも蓄積しています。教育のサービスも十分でなく、学齢期の子どもたちの大半が難民居住区内の公立学校に通っているのに対し、幼児期(6歳以下)の子どもたちは就学前教育を受ける機会が提供されていませんでした。さらに、難民は配給された食料で生活せざるを得ず、難民居住区において、栄養状態の悪い子どもの割合が高くなっていました。
このような状況を受け、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2016年8月より、ウガンダにおける南スーダン難民支援の事業を開始しました。2017年7月からは、アルア県エデンⅠ、Ⅱ、Ⅳ難民居住区、アジュマニ県アゴジョ、オルアⅠ、Ⅱ難民居区、キリヤドンゴ県クラスターJ難民居住区の7ヶ所において、特に脆弱な子どもたちに対する個別支援、「こどもひろば」と就学前教育施設の運営および初等教育へのスムーズな移行支援、母子への栄養支援を実施しました。
また、事業対象地7ヶ所を含む難民居住区の保健センターや「母と子のためのスペース」(詳細後述)において、石鹸や手指消毒液を導入しました。これにより、衛生状態の改善や衛生に関する意識啓発にもつながりました。
3.活動報告
特に脆弱な子どもたちの個別支援(ケース・マネジメント)
ケース・マネジメント
ケース・ワーカーが中心となって、難民居住区内での家庭訪問を行い、養育者や子ども自身との対話を通して、子どもが抱える困難の特定および対応を行いました。
対応にあたっては、例えば、衛生環境の劣悪な家で暮らす子どもに対して石鹸などの衛生用品を提供したり、保健センターや他機関、地域の福祉関係者等と連携し、支援が必要と考えられる子どもを保健センターや教育サービスなどにつないだりしました。
セーブ・ザ・チルドレン職員とケース・ワーカーの会議の様子
「子どもの保護委員会」の活動支援
地域住民の中から選ばれたメンバーから成る「子どもの保護委員会」の定期会合や研修を実施しました。「子どもの保護委員会」は、支援が必要な子どもを特定してケース・ワーカーにつないだり、地域における啓発活動を実施したりしました。定期会合では、対応が必要な子どもの状況などについて話し合いました。
コミュニティとの対話の実施
虐待、ネグレクト、早婚や児童労働といった、コミュニティが抱える子どもの保護の課題について住民同士が議論する機会を設けました。
代替監護下の子どもたちおよび家族との会議
親と離散した子どもへの代替監護を提供する家(里親)との会議、また代替監護下にある子どもたち(里子)との会議をそれぞれ実施しました。これらの会議では、各家庭で抱える課題や、前向きな子育てについて話し合いました。
「こどもひろば」の活動運営
「こどもひろば」の運営
3歳から17歳の子どもを対象に、各年齢の発達段階を考慮しながら、お絵かきや貼り絵、球技や縄跳び、ディスカッションや読み聞かせなど、異なる種類の活動を組み合わせて活動を実施しました。
また、2017年12月の「性差別による暴力をなくすための16日間キャンペーン」の期間中には、「こどもひろば」において、ディスカッションや劇などを通した、性暴力をなくすための啓発活動を実施するなど、地域住民が集まり、イベントを実施する場所としても機能しました。
「性差別による暴力をなくすための16日間キャンペーン」に合わせ、性暴力の予防啓発のために、劇を披露する様子
保護者向けセッションの実施
子どもの保護に関する問題の予防や意識啓発を目的として、「こどもひろば」に参加する子どもたちの保護者向けのセッションを実施しました。テーマは、保護者の関心に応じて、前向きな子育て、子どもとの向き合い方、乳幼児の栄養食などを取り上げました。
ピア・グループの活動支援
12歳から17歳の子どもを主な対象として、子どもの保護の促進を図るピア・グループを構成しました。コミュニティにおける子ども同士の対立などを予防するための啓発活動を、子どもたちが自ら計画、実施しました。
就学前教育プログラムの運営
就学前教育プログラムの実施
主に3歳から6歳の子どもたちを年齢別に3クラスに分け、就学前教育ボランティアが、小学校入学に向けての基礎となる読み書きや算数の授業を行うとともに、挨拶や手洗いといった日常生活の基礎についての学習の機会を設けました。
就学前教育ボランティアの研修
読み書きや算数の授業の進め方に関する研修を実施するとともに、身近な材料で教材をつくる方法についての研修も実施しました。
就学前教育ボランティアの研修の様子
「こどもひろば」運営委員会の活動支援
本委員会は、保護者や地域のリーダーから構成され、就学前教育プログラムの運営のモニタリング、就学前教育プログラムの改善計画の立案、実施を担いました。委員会のメンバーが、保護者から材料や調理ボランティアを募り、材料の管理等を行うことで、事業期間を通して子どもたちに補食を提供することができました。
初等教育へのスムーズな移行支援
ウガンダの学校年度は2月~12月のため、小学校入学前となる10月~2月の期間を中心に、年⾧クラスの子どもおよびその保護者に対して、初等教育へのスムーズな移行支援を行いました。具体的には、小学校訪問の機会を設けたり、入学にあたり必要な手続きに関する説明会を開催したりしました。
「母と子のためのスペース」を中心とした栄養支援
「母と子のためのスペース」の建設
「こどもひろば」の敷地内に、「母と子のためのスペース」を建設しました。本スペースは、安心・安全な環境下で母親がストレスなく授乳でき、また、母乳育児や乳幼児の栄養に関して栄養指導カウンセラーに相談できる場所として機能しました。
完成した「母と子のためのスペース」
栄養支援の実施
「母と子のためのスペース」を中心として、母乳育児の状況や乳幼児の栄養状態のアセスメント、母乳育児に関するカウンセリングを行いました。また、難民居住区内で手に入る材料で調理できる栄養価の高い食事の調理方法のデモンストレーションも行い、母親たちが日々の生活に栄養に関する知識を生かせるよう工夫しました。
これらの活動は、セーブ・ザ・チルドレンの職員による研修を受けた栄養指導カウンセラーが中心となって行いました。
「母と子のためのスペース」で母乳育児の方法についてカウンセラーが指導する様子
保健センターなどへの衛生用品の設置
保健センターや「母と子のためのスペース」に、石鹸や手指消毒液を設置しました。活動するスタッフや利用者の衛生状態を保つことはもちろんのこと、食事や授乳前の手洗いの重要性や正しい手洗いの方法など衛生指導もあわせて実施することで、家庭での衛生状態の改善にもつながるよう工夫しました。
「母と子のためのスペース」に設置された石鹸で手を洗う様子
5.今後について
南スーダン国内の情勢は依然として不安定で、帰還の見通しは立たず、避難生活の⾧期化が予想されています。そのような状況においても子どもたちが健康に成⾧していくことができるよう、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、今後も本事業を継続し、特に子どもの保護委員会や「こどもひろば」運営委員会など地域の人々の能力強化に力を入れて取り組んでいきます。
また、保健センターや「母と子のためのスペース」に設置した石鹸などの衛生用品は、利用者に大変好評であるため、衛生指導も同時に行いながら、効果的な支援を継続していきます。





